スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映画「バウンティフルへの旅」

息子夫婦と都市の狭いアパートで同居する老齢の女性。
価値観が相容れない嫁には、好きな讃美歌も古臭い歌だと嫌われ自由に歌えず、
「息子は結婚すると遠くに行き、娘が結婚すると息子を一人連れてくる」
という言葉をかみしめる孤独感。
この映画の主人公の老齢の女性の状況に共感される女性は、
平成になった日本でもかなりいらっしゃるのではないか。
無縁社会だの、お一人様の老後といった書籍や言葉がもてはやされるのも、
女性の自立、男女雇用機会均等法の整備、そして、
男女共同参画社会だのと称されて数十年経ちながらも、
いまなお解決されない家族の問題が、
背景にあることの証左かもしれません。

DSCN9277.jpg

本作の主人公は若い頃に結婚し農作業の傍ら主婦として立ち働き、
夫の死後、子供を女手一つで育ててきた80代と思われる女性です。
60代に息子夫婦と同居のため田舎から都会に出てきて20年。
中年となった息子には子供はいない。
妻が子供を要らないと主張する女性で、
同世代の友人知人の家庭とは相当に様子が異なるカップルですが、
専業主婦の妻は同居している老齢の姑の健康管理のために、
自由がなくなったと感じている。
けれど、姑には心やさしい息子が嫁の言いなりに見えて、
話し相手もいない都会での20年の日々が重くのしかかっており、
こんな暮らしはもう嫌!耐えられないという思いでいっぱい。

日本ではおなじみの嫁姑問題がそこにあり、重苦しくなります。
そういう意味では、本作はアメリカ版嫁姑問題。
その渦中にある主人公姑の孤独というものが、
家出を決行した後の彼女の行動によって立ち現われてくる。

幼馴染が暮らす故郷に行きたいと強く願うようになった背景には、
田舎から出てきて知り合い一人いない都市で暮らすようになって20年、
彼女はストレスから心臓を悪くし自由な外出もままならない日々。
年金も嫁に管理されて自由に使えない姑にとって、
そこでの暮らしは牢獄そのもの。
とうとう望郷の念に駆られて息子夫婦のアパートを飛び出し、
故郷バウンティフルを目指します。

が、20年ぶりの旅。
駅でチケットを求めたところ故郷の名前を冠した駅は今はなく、
過疎化が進んだ故郷の田舎への道は、おぼつかない。
実際にはバスを一日乗り継げば行き着くところにあるのですけれど、
田舎育ちで高齢となった姑にとって、
2部屋しかない息子夫婦とのアパートを、
20年ぶりに飛び出したわけですから、
その溜まりに溜まった思いゆえに、その道程は遙かなる旅路となります。

バスが走り出したときの彼女の高揚感、
バスから眺めるどうということのない風景も、
彼女にはすべてが心の解放と郷愁ゆえに実にみずみずしい。
詩情豊かに描かれていく風景もさることながら、
まるで旅行に出かける幼稚園児のようなわくわくした気持ちが、
そのまま伝わってきて目が離せなくなりました。

バスで同乗した若い女性との会話が、実に生き生きしていて、
80代の老女は、死んだ夫を愛してはいなかったと語り、
好きな人は他にいたと涙ながらに語り出す。
そして、自分の娘も生きていれば、
あたなのように親切な心のやさしい女性になっていただろうと
姑は思わず口にする。

映像としての風景が詩情豊かであればあるほど、

DSCN9300.jpg

DSCN9288.jpg

DSCN9302.jpg

彼女の置かれている現実が人生の重さとして
観る者の心にのしかかってくるようで、
どうにもならない人生の重さ、
その中で生きていくしかない人間の諦念が切なく伝わってきます。

DSCN9285.jpg


息子夫婦に頼る以外に生きる術がない主人公は、
残された人生をここで暮らしたいと願っても、
死に場所すら自分の思い通りにはならない。

DSCN9265.jpg


現代の女性たちは、いえ、男性たちもまた、
本作の老婦人の老後の人生とは、
かなり違った生き方が可能にはなっているはずですが、
この映画の主人公の彼女に共感する方は多いのではないでしょうか。
そして、息子や嫁の気持ちも分かるという方もまた多いだろうなあと。

DSCN9293.jpg



「老後の人生」という言葉は巷に溢れていますけれど、
「老後の人生」は老いてから考えても間に合わない。


老いというのは、日々少しづつ折に触れて感じたとしても、
誰もが「自分も年を取った」と口にしても、
それは年齢を重ねたという意識であって、
自分と老いを冷徹に見つめることのできる人はいないのではないか。
人間というのは自分だけは老人になったとは思わないようなので、
老後の人生などと口にはしても、年齢で切らない限り、
誰もが自分を老人になったとは認めない、そういう生き物なのかもしれません。
だから、老後の人生の設計というのは、
なかなかできないのかもしれません。

死と同様に老いもまた他人事のように受け止めている限り、
眼に映る風景は美しいとは感じず、
人にも優しくなれないのかもしませんね。

DSCN9302.jpg

DSCN9301.jpg


家族や親子ゆえにどうにもならないものを背負って生きていくとき、
共に耐え、共に悲しみ、共に許し、共に支え合って生きるとき、
人生は、実に切ないと感じます。切ないけれど、
だからこそ、どんな人の人生もそのとき安堵の中で、
輝きを増すのではないか。

本作は、そんなことを感じさせてくれる隠れた名画でした。

追記:今月になって更新しているブログ記事の中で、
無能無策な政治から自衛する力について書いていますが、
自衛力の中で大事なものの一つは家族力だと、
わたくしは思います。そのことに思いを馳せて、
この映画をご覧いただいてもいいかなと思いました。
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 映画の感想
ジャンル : 映画

コメントの投稿

非公開コメント

ブロとも申請フォーム

★リンクフリー

検索フォーム

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

★RSSフィード

QRcode

QR
管理人

月光院璋子

Author:月光院璋子
自由の享受を幸せと実感する人間です。相手の自由を尊重できる方は幸い。自由のために戦える生は尊い。
自由=愛です。

【Thank You】
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
いま、雪が降る
★お知らせ★
最新記事
Bookmark
月と遊ぶ
最近のコメント
★お花が好き♪
月別アーカイブ
ブログ全記事表示

全ての記事を表示する

ブログ内検索
新しい家族(=^^=)
いつでも里親募集中
★月光の下で
カテゴリー
★閲覧のBGMに・・・
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。